雑誌

磯崎憲一郎『終の住処』(文藝春秋2009年9月号)

時間の伸縮が言葉の連なりとして実に巧妙に設計されていて、非常に充実した小説だと思います。

大江健三郎「読むことに始まり、読むことに終る」(すばる2009年1月号)

すばるには時々、大江健三郎の講演録が掲載されることがあり、毎月の発売日には楽しみに目次を見る習慣ができています。講演の採録の場合、講演会やシンポジウムの趣旨に即した話題に始まり、主催者の仕事への敬意を込めた言及やユーモアに満ちた挿話を織り…

松本圭二「あるゴダール伝」(すばる2008年4月号)

ここ数ヶ月で読んだ小説の中では飛び抜けて刺激的でした(とはいえ最近は小説に限らず本をほとんど読んでないのですが)。過ぎ去ってしまった時間と空間に対する郷愁と、その郷愁の感情も含めた過去と現在のすべてを突き放した眼で見つめる視線の、微妙な均…

古井由吉「書く 生きる」(すばる2008年2月号)

わたしの小説は多くの場合、少し長い随想のような部分から始まります。そこからなんとか小説を浮かび上がらせようとする。短編の場合は、全部が随想に見えるかもしれません。長いものになると、小説の途中でまた随想的な文章を挟む。この随想風の部分は「渡…

阿部和重「グランド・フィナーレ」(群像2004年12月号)、第132回芥川賞選評(文藝春秋2005年3月号)

阿部和重の芥川賞受賞作を、なぜか初掲載誌で読んでから、文藝春秋掲載の選評を読みました。今さらな感じは否めませんが、あくまで自分のために感想を書き留めておきます。

松浦寿輝「方法叙説」(群像2004年9月号)

松浦寿輝による、早すぎる自叙伝であり自作解説。昨年これを発表した時、松浦先生はまだ50歳になるかならないかだったはずです。時間軸に沿った展望のもとに、過去から現在(現在から過去)に向かってリニアに自作を振り返るというのではなく、あるいはひと…

中村文則「土の中の子供」(文藝春秋2005年9月号)

今頃読みましたが、ちょっとがっかりな出来。