『ミッション:インポッシブル』(ブライアン・デ・パルマ)

DVDで。公開以来2度目。脚本はデヴィッド・コープロバート・タウン、ストーリーとしてコープとともにスティーヴン・ザイリアンがクレジットされています。
「悪人は落下する」、これは映画における普遍的法則です。『バットマン』および『バットマン・リターンズ』において、ティム・バートンがこの法則を「落下するものは悪人となる」と読みかえ、さらにヒーローであるはずのバットマンを「落下運動を体現できない存在」としてネガティヴに描いてみせたことは、以前にも書きました。
さて、となると『ミッション:インポッシブル』のジョン・ヴォイトが悪人であることは橋から落下する身振りからして明白であり、トム・クルーズが「落下しない人」として描かれることも、法則に照らし合わせれば当然の流れです。落下しないことでトム・クルーズ演ずる主人公は「宙吊りの人」「滑走する人」となるわけで、ラストでも彼は列車の上を歩いて移動するわけではなく、滑ってジョン・ヴォイトに接近するのです。もちろんそこでもトム・クルーズは疾走する列車から振り落とされず、逆にジョン・ヴォイトは爆破されたヘリコプターの残骸もろとも線路にたたきつけられます。
問題はこの作品の主人公が「落下できない人」ではなく「落下しない人」として提示されていることで、言うまでもなくその差異がティム・バートンブライアン・デ・パルマを決定的に隔てています。