『M:I-2』(ジョン・ウー)

DVDで。劇場公開時に観て以来2度目(公開時に2回観たような気もしますが)。ひさびさに『汚名』(アルフレッド・ヒッチコック)を再見して両者の共通点を確認する必要がありそうですが、それをめぐって争奪戦が繰り広げられる細菌兵器「キメラ」とその特効薬とは、まさにヒッチコック的な「マクガフィン」です。以前にも指摘したように*1ペイチェック 消された記憶』が『北北西に進路を取れ』のリメイクであったことを考えると、ジョン・ウーのフィルムにおけるヒッチコック作品への言及には注目すべき点があるように思います。
トム・クルーズが巧みに距離を伸縮させる技に秀でた人物であるとするなら、盗みを生業とするサンディ・ニュートンは相手との接触において自身を十全に機能させる存在であり、両者の体現する距離/接触がさまざまな様態のもとに展開される競馬場のシークエンスは、すぐれて映画的な場面となっています。
登場人物たちのあいだで顔(と声)が頻繁に交換されますが、ここには前作『フェイス/オフ』との連続性が感じられます。
シリーズ1作目との継続性に関して言えば、墜落する飛行機との対比で提示される冒頭のロッククライミングの場面において、トム・クルーズはまたしても「落下しない人」「宙吊りの人」として描かれますし、中盤のビル内への侵入シーンでも、屋上の通風口から吹き抜けを真っ逆さまに落下しますが、床すれすれのところで止まり、ワイヤーによって宙吊りの姿勢をとるのでした。サンディ・ニュートンの崖からの落下を2度にわたって阻止する点では、彼は「落下させない人」でもあると言えるかもしれません。
 

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