『壁の中に誰かがいる』(ウェス・クレイヴン)

DVDで。2回目。
タロット占いに始まる静かな導入部分から祝祭的なラストに至るまで、緊張感と笑いが不思議な自然さで同居する、実に美しい映画です。『ゾンビ伝説』と同様、ここにも革命と解放があり、倒錯的な拷問があり、死者に限りなく近いものたちが密集しうごめく空間があります。ウェス・クレイヴンの映画を「悪夢」の言葉で語ろうとするのは単純に過ぎるかもしれませんが、あの壁の裏側に広がるあり得ないような空間の広がり、迷宮的に入り組んだ狭苦しい通路は、やはり「悪夢」的な時空間と言うのが適切でしょう。それは『鮮血の美学』の森の中のようでもあり、『エルム街の悪夢』のフレディ・クルーガーが支配する空間のようでもあります。