『ROBOTICS;NOTES』(MAGES./5pb./ニトロプラス)

ROBOTICS;NOTES (通常版) - PS3

ROBOTICS;NOTES (通常版) - PS3

科学アドベンチャーシリーズ第3弾です。PS3版をプレイ。1/4に始めて本日トロフィーコンプリートしました。総プレイ時間は約80時間20分。


以下、感想など。












ヒロイン個別ルートを4つすべてクリアするとグランドルート(=メインヒロインルート)に入ることができるという構造なのですが、個別ルートはすべて同一世界線上の出来事ですので、物語的にはあくまで一本道です。さらに言うと個別ルートは時間軸に沿った順番があり、推奨順に進めるのが望ましい。つまりは分岐そのものにあまり意味がないのですが、個別に入るだけならさして難しいフラグ管理が必要なわけでもないですし、別にこれでいいのでしょう。わずかではあれゲーム性を残したいということなのでしょうが、シリーズ前作『STEINS;GATE』のような、(分岐とループという)システムと物語が重なり合う構造は、ここにはありません。


「今回はストレートな青春ものです」といった趣旨の制作者の発言をどこかで読んだ記憶があって、プレイ前は漠然と「ロボット製作に情熱をかける高校生たちの物語」といったものを想像していたのですが、実際には序盤からサスペンス的な要素や非日常的な事件が数多くちりばめられ、物語を進める動力源となっています。君島レポートの発見とその真偽、みさ希とエグゾスケルトン社のあやしげな動きと目的、主人公が抱える病気の原因でもある「あねもね号事件」の真実、劇中アニメ「ガンヴァレル」をめぐる謎、仲間たちがそれぞれに抱える葛藤、そしてもちろんロボットを万博までに完成させられるか、といった複数のサスペンスが絡み合いつつも、その全体を一歩引いた立ち位置から眺める主人公の視線がなんともすばらしいです。


おそらくわたしはシナリオライター林直孝さんのテキストが好きなのでしょう。ふんだんに盛り込まれたサスペンス的な要素は、片付けなくちゃならない宿題のように主人公の意識の片隅に常にありつつも、今はただただゲームをやり続けたいという気持ちが勝って、それらの宿題は背景に追いやられる。けれどやっぱりやらなければならない宿題であるからには完全に忘れ去ることはできず、ゲームに没頭できる時間の確保と(それを意識しないようにはしているが本人ももちろん気づいているように)幼なじみのためにしかたなく手をつける、といったなりゆきが、物語にある種の屈折を与えています。この屈折は『CHAOS;HEAD』のそれと同種のものであり、『CHAOS;HEAD』でも主人公の現実逃避的傾向が物語の進行を遅延させ、それによりサスペンスを効果的に機能させる役割を果たしていました。


『ROBOTICS;NOTES』の主人公には強い欲望があります。格闘ゲーム「キルバラ」でランキング一位=全一になりたいというのがそれですが、このほとんどオブセッションとも呼ぶべき欲望の強烈さが物語にひとつの方向性を与えていて、実際ラストバトルを支える動力源のひとつでもありました。この欲望の表明を単なる口実や別の欲望の代替物と捉えるのは面白味に欠けます。むしろその正当な根拠を欠いた強烈さこそが、物語を通して一貫して問われ続けているのです。


といったわけで、わたしとしては充分に楽しむことができました。すでに発表されているシリーズ第4作も期待して待ちたいと思います。