『HITOSHI MATSUMOTO Presents ドキュメンタル』

Amazonビデオで、数日に分けてシーズン1とシーズン2を視聴。


『笑ってはいけない』シリーズが、タイトルに反して「笑う(笑ってしまう)」ことではじめて成立しているように、お笑い番組において演者が笑うことは番組成立の非常に重要な要素であり、「最後まで笑わなかった者が勝ち」というルールの『ドキュメンタル』においても、演者が「笑う」瞬間に向けてのサスペンスこそが主題となります。いわゆる「ゲラ」の芸人が多く集められるのも、企画趣旨に反しているようでいて、その実主題の実現には重要なことなのですが、他方で「笑わないこと」が得意な人というのもなかには確実にいて、そのような人が最後まで残るのは理の当然として、その結果最終盤が笑ってしまう瞬間に向けたサスペンスとは無縁な膠着状態に陥るのも、これまた当然の帰結なのでしょう。


シーズン1では天竺鼠・川原ととろサーモン・久保田がまさに「笑わないこと」が得意な人たちで、他方にFUJIWARA・藤本とダイノジ・大地という終始ニヤニヤしている人たちがいて、対置したときにやはり後者の弛緩ぶりが気になります。藤本がキーマンなのは間違いないのですが、あの弛緩ぶりはサスペンスの成立を危険にさらす種類のものです。この点、シーズン2では多少改善されていましたが…。
シーズン2の「笑わないこと」が得意な人はジャングルポケット・斉藤で、彼の間の悪さというか空気を読まない小技は、いくつかの名場面を台無しにしていたように感じましたが、その台無しも含めての全体のおもしろさがあります。
個人的に好きだったのは、シーズン1だと天竺鼠・川原とハチミツ二郎、シーズン2だとダイアン・津田とバイきんぐ・小峠です。「笑わないこと」と人を笑わす攻めの姿勢とがバランスよく並立しています。


総じて楽しめたのですが、ひとつだけ不満があるとすれば下ネタの多さで、シナリオなしのガチバトル(と思われます)だとどうしても下ネタに傾きがちというのは、ある程度しかたのないことですし、それを禁じるのもちょっと違うかとは思いますが、いささか安易すぎるように感じました。