『ライフ・アクアティック』(ウェス・アンダーソン)

吉祥寺バウスシアターにて。ロードショー公開中にもう一度観るつもりがいつの間にか終わっていて、ずっと心残りだったのですが、なんとか2度目を観ることができました。この映画はきっと何度観ても楽しいし引き込まれて時の経つのを忘れてしまうし、とにかく何とも言えず魅力的な映画なのですが、変な言い方になるけれど登場人物みんなが(そしてもちろんウェス・アンダーソン自身も)実に真剣で、シニカルにならず、本気で物事に取り組んでいることに、観ているこちらも勇気づけられるのだと思うんです。もちろんそこにはビル・マーレイ演ずる主人公がそうであるように、挫折や絶望や自己嫌悪や虚無感が幾重にも織り込まれてはいるのですが、それでもそれら全てをなかったことのようにして、愛と希望とを胸に、前進していくしかないのです。こんなこと書いていて本当にバカみたいだし滑稽なのだけど、そのバカみたいなことが、嘘のように奇跡的に映画という形をとって、スクリーンに映し出されていることの「美しさ」、それを信じ求める気持ちなしに映画を観ること、撮ることなんてありえないのではないでしょうか。だからこそ、ラストでジャガーザメに再会したビル・マーレイの、「僕のこと覚えているかな…」というつぶやきに、わかってはいても号泣させられてしまうのです。