雨穴『変な家 文庫版』(飛鳥新社)

昨年春に読み始めた本がいつまで経っても終わる気配を見せず(単に読書時間を確保できていないだけ)、気晴らしに書店店頭で手に取ったこちらを読了。ほとんどが会話形式で進むこともあり、非常に読みやすかったです。

読むものにとっていくぶん突飛に見える推理が物語序盤で展開され、その推理に沿って調査を進めるかたちで物語が進行し、そして(当初は想像だにしなかった複雑な経緯が背後に存在していたにせよ)ある意味その推理は正しかったという結末に至る…巻き込まれた側の、被害者とも言える人物が、実はこのような結末をひそかに計画し導いた真犯人なのではないか、というどんでん返しは用意されているものの、それが物語終盤に出てきたなじみの薄い人物であるためどんでん返しのインパクトもさほど強くなく、それに比べると序盤で提示される推理が現実離れした設定で強烈な印象を残すがゆえに、その推理自体の枠組みはひっくり返されることなく終わっちゃうんだ…というのがこの小説最大の驚きでした。