『人のセックスを笑うな』(井口奈己)

BDで。初見。これまたとてもいい映画です。エリック・ロメールのフィルムを思い出しながら観ていました。
この映画の冒頭、永作博美松山ケンイチからサンダルを借り受け、その少し後、キャンパス内の喫煙所で今度は松山が永作からライターを受け取ります。このやりとりが、これからふたりが関係することを決定づけるわけですが、それにしても、ものの交換、ある手から別の手へとものが移動することが、なぜ多くの映画において独特の魅力を放つことになるのか、不思議でなりません。映画的な記憶の蓄積によるものなのか、それともなにかもっと別の理由があるのか…、ともあれここでも「交換」によって映画が動き出すことになるわけです。
永作のアトリエ、彼女と松山の逢瀬の場所となるあの空間の素晴らしさもさることながら、松山がはじめてアトリエを訪れるシーンでの、コートを脱がせるあたりからの演出も非常にサスペンスフルですし、そこでのキャメラ位置、ショットの長さも実に的確です。
喫煙や飲食の主題系を持つこの映画は、口唇器のフィルムでもあります。

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