旅の記憶

古い文芸誌(新潮の2003年1月号)に載っていた青山真治の『交響』という短編*1を読んで、沖縄が舞台なんですが、自分がつい数週間前にいたその土地の「むっとする空気」、「Tシャツ一枚で、汗がどっと吹き出る」あの感覚が身体の内に甦ってくるのを感じ、再び沖縄の地を踏む自分の姿までくっきりと想像できるようで、とにかくもう一度行きたくてしかたがないのです。よく沖縄はやみつきになると言うけれど、そういう話を聞いて想像していたのとは全く違っていて、土地の人とのふれあいがあったりとか東京にはない悠久の時の流れを感じたとかではなく、ただただあの強烈な日差し、肌の表面を文字通り焼き焦がす紫外線の強さ、湿度の高い蒸し暑い空気が、なんとも懐かしく思い出されてくるんです。夏の終わり頃か、場合によっては来年になってしまうかもしれないけど、もう一度その空気を身体で確かめに行きたい、そう思います。

*1:単行本『ホテル・クロニクルズ』に収められています。