『フランティック』(ロマン・ポランスキー)

DVDで。初見。実のところわたしはロマン・ポランスキー作品の良さが今ひとつよく理解できていないのですが、この映画はとてもおもしろく感じられました。冒頭のホテルの場面の、一見無駄にだらだらしているように見えもする持続も悪くないですし、エマニュエル・セイナー(セニエ)のアパルトマンや死んだ麻薬密売人の部屋も映画的空間性を獲得しています。ハリソン・フォードがセイナーの部屋にもぐり込むため、屋根づたいに窓まで移動するのですが、途中で抱えていたスーツケースの中身をぶちまけてしまい、脱いだ靴も屋根を滑り落ちていくのを見て、手に持ったもう一方の靴をポイと放り落とす、そのどうとでもなれというようなやけっぱちな感じが妙によかったです。