『ブラックブック』(ポール・ヴァーホーヴェン)

新宿テアトルタイムズスクエアにて。
ロボコップ』同様、このフィルムにもどこかしら古典的な映画の手触りを感じ取ることができます。『諜報員』(ボリス・バルネット)を想起させる、などと書けば大げさに過ぎるかもしれませんが、サイレント期の映画を髣髴とさせる空間設計やキャメラポジションなどが、ポール・ヴァーホーヴェンのフィルムを特徴づけるものであることは確かです。
 
『ブラックブック』は身分を偽ること、変装すること、衣装や髪の色によって(時には死体になりすますことによって)偽装・擬態することをめぐる映画です。心理的な深みを欠いた登場人物たちがひたすら表層を交換し続ける映画。ホロコーストをめぐるシリアスな物語を期待すると肩すかしを食わされますが、かわりにここには高度な活劇性が存在しています。
 
棺桶の使い方や、ヒロインが物語の終盤で窓から飛び降りるところなど、とてもいいです。