米澤穂信『真実の10メートル手前』(創元推理文庫)

 『さよなら妖精から続く太刀洗万智シリーズの短編集。太刀洗万智の人物像から言って、三人称での描写、すなわち視点人物を別に設け、その人の目線で彼女を描く方法を採用しがちなのに、この短編集の表題作や『王とサーカス』で大刀洗の一人称を用いていることにはそれなりの意味があるのだろうと推測していましたが、まさにそのことがあとがきに書かれていて、その倫理性に非常に感銘を受けました。この小説家を他から際立たせているのはまさにこの倫理性であると思います。

真実の10メートル手前 (創元推理文庫)