『コーヒー&シガレッツ』

夕食後、シネセゾン渋谷で『コーヒー&シガレッツ』(ジム・ジャームッシュ)を観ました。
 
過去に撮りためてきた短編を一本にまとめたという作品の性格上、『ゴースト・ドッグ』以後というのは現在カンヌに出ている次回作“Broken Flowers”に譲って、ここはあくまで番外編的なものと捉えて欲しいということなのでしょう。そういうつもりで観る限りにおいては、これはこれで悪くないし、とても楽しめる作品になっていると思います。コーヒーとタバコというアイテム以外にも、チェック柄のテーブル(またはテーブルクロス)とかコーヒーカップでの乾杯だとかの共通項が各挿話を結びつけ、部分的に登場人物たちの語るエピソードが重複しつつ、ふたりないし三人の登場人物のあいだに交わされる会話と気まずい空気を描いてみせるわけで、その気まずさが実におかしいわけです。好きなエピソードはビル・マーレイとRZA、GZAのヤツですが、冒頭のロベルト・ベニーニの頭のおかしな演技(小さなテーブルの上にコーヒーカップが4つも5つも載せられていて、ひとつに口を付けたかと思えば次はまた別のカップを手にする、というあたりはなんともおかしいですよね)なども導入としては非常にいいですし、スティーヴ・ブシェミの出てくる2番目の挿話もよくできてますし、ひねくれた受け答えばかりするトム・ウェイツにとまどいを隠せないイギー・ポップの姿もくすくす笑いを誘いますし、ラストの老人の惚けぶりも面白くて、要するに全部いいんですが、それでもやっぱりジャームッシュのファンとしては『デッドマン』『ゴースト・ドッグ』以後の作品を、早く観たいと思うのです。