『ピアノ・ブルース』

昨日に引き続き「音楽映画特集」。今日は2本観ました。
1本目は『ピアノ・ブルース』(クリント・イーストウッド)。昨日の『ソウル・オブ・マン』同様、「ザ・ブルース ムーヴィー・プロジェクト」の中の1本です。イーストウッドの意向により劇場公開はされていません。
ピアノという切り口でブルースの歴史を概観するといった作りになっていて、レイ・チャールズデイヴ・ブルーベックドクター・ジョンらにイーストウッド自らがブルースとの出会いを尋ねるインタヴューと演奏、そして偉大なミュージシャンたちによる過去の演奏シーンが織り交ぜられて構成されているのですが、この過去のアーカイヴ映像がとてつもなくすごくて、ファッツ・ドミノアート・テイタムオスカー・ピーターソンといったそうそうたる面々によって繰り広げられる絶頂期の演奏はとにかく圧倒的にすごいのです。キー・タッチの厳密さと軽やかさ、眼を見張るスピード感、力強さと確信に満ちた音、どれをとっても一級品です。
それに比べると、年老いたミュージシャンたちによる現在の演奏が技術的に見劣りしてしまうのは致し方ないことなのですが、しかし例えばわたしがこの映画の中でもっとも感動したデイヴ・ブルーベックによる演奏では、あきらかに指がこわばって思うように動いていないにもかかわらず、奏でられる音楽に深みというかいわく言い難い力があって、強く心を動かされてしまうのです。