『生血を吸う女』(ジョルジョ・フェッローニ)

一昨日紀伊國屋書店本店で「映画はおそろしい」のDVDボックスを買ったら、今日のイベントのチケットをくれたので行ってきました。ボックスに入っている『生血を吸う女』のDVD上映と、黒沢清×中原昌也トークショーという内容。
映画は60年代初期のチネチッタ(だったと思う)に蓄積された職人芸が十全に活かされた秀作でした*1。怖いというよりもその職人芸の見事さに見とれてしまう感じでしょうか。特に簡潔な脚本とセットの造形がこの時代ならではのすばらしい仕事ぶりです。タイトルから勝手に吸血鬼ものだと思いこんでいたのですが、女が血を吸う話ではありませんでした。エロティシズムとゴシック風の様式美、古めかしい屋敷(風車小屋)と夜の墓所、いかがわしい科学者(医者)と蝋人形に埋め込まれた死体、そして最後には蝋人形もろとも燃え上がる風車小屋などなど、ホラー映画の定番的な要素をめいっぱい埋め込んだ作品で、逆にここまで定番要素をしかるべく盛り込んだ映画となると、実はそれほど多く存在しないのではないかとも思われてきます。
トークショーの方は、メモを見つつ組み立てを考えてしゃべろうとする黒沢清に対し、中原昌也がいくらか遠慮を見せつつも随所で唐突な突っ込みを入れて流れを断ち切るというパターンで、とりとめないようでいてポイントを押さえた話がおもしろかったです。最近の映画の話になって、黒沢清さんが『宇宙戦争』を観て「長年スピルバーグを応援してきてよかったと思った」と話していたのが印象的でした。

*1:この時代のチネチッタがいわゆる「撮影所システム」として機能していたのかどうかは、不勉強でよく知りません。今度調べてみようと思います。