『シークレット・ウインドウ』(デヴィッド・コープ)

DVDで。初見。デヴィッド・コープはこれが監督デビュー作なのかと思っていたのですが、今調べたらこの前にも2本ほど撮っているのですね。知りませんでした。
映画の前半、ジョニー・デップを襲う猛烈な眠気や割れる鏡といった細部から、ジョン・タトゥーロジョニー・デップの分身であり妄想の産物であるということに、観ている方はうすうす感づいてしまうわけだけど、デヴィッド・コープはそのあたりを全く隠すつもりはないようで、例えば冒頭のモーテルとか、湖畔のキャビンとか、車を死体ごと湖に沈めるとかいった細部が、いくつかのフィルムの記憶を呼び覚ます、そこにこの作品のおもしろさが賭けられているのでしょう。街の頼りなげな老保安官(腱鞘炎で、そのリハビリのために刺繍をやってたりする)が後半で死体を湖に沈めた直後のジョニー・デップに声をかけるのですが、このときにサングラスをかけさせるあたりも、悪くないと思います。この老保安官にはもっと出てきて欲しかったけれど、このぐらいしか出しようもないのかもしれません。
冒頭に「秘密の窓」からキャビンの中に侵入したキャメラがそのまま鏡の中に入り込むというショットがあり、終盤のマリア・ベロがキャビンにやってくるところでも、キャメラは再び鏡を通り抜けるのですが、このあたりの妙に理に落ちた描写が、いささかおもしろさを減じているように感じました。それと、ジョニー・デップがカウチから荒海に落ちる夢を見たりするあたりも、落下への恐怖というのが心理的な描写に限定されてしまっているようで、湖に車を落とす際に腕時計がからまって危うく自分も一緒に崖から落下してしまいそうになる場面など考え合わせれば、もう少しよくすることもできたように思います。「突き刺すこと」(ラストのトウモロコシ)といった主題もありましたけど、まあ全体としてはそれなりに楽しく見ることができました。