『オペラ座/血の喝采』(ダリオ・アルジェント)

ビデオ。2度目。アルジェント作品における「(殺人の)目撃」のモチーフが、ここでは逆に目撃することを強制されるという反転を見せています。主人公(クリスティナ・マルシラック)のオペラ歌手は子供の頃目撃した殺人の光景がトラウマとなっており、彼女はオペラ歌手として観客から見られる存在であり、ダリア・ニコロディが殺される場面では扉ののぞき穴から外を見るニコロディの瞳をのぞき穴の向こうから放たれた銃弾が打ち抜くという演出がなされ、ラストでは事件の「目撃者」であるカラスが犯人を攻撃し目玉をえぐり出してしまうのですから*1、この映画における「見る」こと「見られる」ことの重層性は明らかです。他方で、主人公が音楽関係の職業に就いているというのは『サスペリアPART2/紅い深淵』や『インフェルノ』でも使われている設定であって、それに関係して聴覚的演出にもちゃんとアイディアが活かされています(カラスの鳴き声、リラクゼーション用のテープなど)。
ところでこの作品、どうやら10分ほど長いバージョンがあるらしく、ラストも続きがあるようなのですが、DVD化の際にはぜひその「完全版」をお願いしたいものです。

*1:この場面ではカラスの見た目ショットとして、劇場の客席上空を回転しつつ降下するというショットが使われています。