『スリープレス』(ダリオ・アルジェント)

DVDで。3回目か4回目。
ダリオ・アルジェントの代表的なフィルムのひとつであるにもかかわらず、残念なことにわたしの手元にあるDVDはひどく画質が悪いです。昼間の場面はまだいいのですが、夜のシーンなど暗部がべったりつぶれてしまってなにが行われているのかさっぱりわかりません。リマスター盤のリリースを強く希望します。
映画の冒頭、殺人者の部屋に呼ばれた娼婦が危険を察知して逃げ出し、その際誤って持ち出してしまった書類ケースのせいで殺人者に追われ、列車内で逃げまどったあげく殺されてしまいます。彼女からの呼び出しで迎えに来た友人もまた、駅前に停めた車のなかで惨殺されるわけですが、この一連の流れが悪夢のようなねちっこさで展開していく様はまさにダリオ・アルジェントならではの演出であり、このシーンでわたしたちは一気に物語のなかに引き込まれます。
ラストの部屋は『トラウマ』の「ニコラス」の部屋や『サスペリア』の魔女の部屋などと同様の、そこにおいて物語の真相が一気に明かされる空間であり、これらの部屋に共通する「光」が、ここでは決して開かれることのない奥のガラス扉をぼんやりと照らし出しています。それにしても、二階の床に横たわった死体から流れ出る血が、床を浸み通して階下の椅子にしたたり落ちる、なんていう状況を延々と撮り続けるあたり、やっぱり並の人ではない感じがします。