『歓びの毒牙』(ダリオ・アルジェント)

DVDで。ダリオ・アルジェントの監督デビュー作。撮影ヴィットリオ・ストラーロ、音楽はエンニオ・モリコーネ。観るのはこれで3回目か4回目になります。
 
暗闇のなかで光を放つ四角く区切られた空間と、そのなかで演じられる事件を目撃することで物語が始動し、最後にはその同じ空間において殺人鬼に襲われる自分自身を発見する*1、という構造は『サスペリアPART2』と全く同型と言ってよいでしょう。映画の観客自身が最後には映画のなかに放り込まれるわけですが、なぜそんなことになるかと言えば、それは彼が映画を「見た」からなのです。その一方では音響が事件を解決に導くきっかけとなるわけで、これもまたダリオ・アルジェント的な主題のひとつと言えます。
夜の操車場で黄色いジャンパーを着た殺し屋に追われる中盤のシーンも実によいですし、この映画でも悪人は落下するわけですが、映画の伝統に忠実な演出もしっかりできる人であることが、よくわかる作品でもあると思います。
(5/31記)
 

*1:暗闇のなかを進んでいくと、突然光に満ちた部屋に飛び出して、そして一瞬後にそこが最初の事件のあった画廊であるとわかるあの場面は、この映画のなかでももっとも美しいシーンです。