『ステップ・イントゥ・リキッド』(デイナ・ブラウン)

夜は吉祥寺バウスシアターboid presents Sonic Ooze Vol.7「爆音サーフの夜」の1本目、『ステップ・イントゥ・リキッド』を観てきました。初見です。大音量による波の音のすばらしさというのもあるのですが、意外なほどおもしろくて、うっとりとスクリーンを見つめておりました。波に乗ることに取り憑かれた人びとと、彼らが波に乗る姿にはとても魅力があって、プロのサーファーたちによる超絶テクニックの数々は文句なしにすごいですし*1、それらをある時は小型ヘリから、ある時は大きな波に飲み込まれつつ捉えるキャメラもまたすごいことになっているはずで、そこまで含めての全体として、観ているこちらを圧倒し、視線をつかまえて放さないのです。取り憑かれると言えば、数十年にわたって一日も欠かさず毎日サーフィンし続ける男がいて、あるいはタンカーの起こす波でサーフィンする人たちがいて、さらに自分たちでオリジナルのサーフボードを作り、新しい波乗りのしかたを開発してしまう男たちがいて、波自体の魅力も強烈に感じつつ、彼ら「憑かれた人びと」にも、観ていて強く惹かれます。波という無償の反復運動を繰り返すものと、それに憑かれて、ある意味では全く生産的でない「波乗り」の快楽を追求し続ける人たちの行動に、今度はわたしが憑かれるのです。自分がなれないものとしてのサーファー、自分にできないこととしてのサーフィンということも、その惹かれる気持ちには加わっていて、わたし自身の(不)可能性ということを最近よく考えさせられるのですが、こういうものを観ていると、普段以上にそのことを強く意識させられます。

*1:彼らプロサーファーたちが危険な波に挑戦する姿を見ていると、ちょうど同じ日に観た『トップガン』のトム・クルーズの無謀な操縦を思い出させられもして、ああなるほど、ここにもかたちを変えて「サーフィン」が息づいているのだなぁ、と感じたりもしました。