『エスケープ・フロム・L.A.』(ジョン・カーペンター)

吉祥寺バウスシアターにて。boid presents Sonic Ooze Vol.7「爆音サーフの夜」の4週目、最後の作品です。ビデオでもDVDでも繰り返し観ているのですが、スクリーンで観るのはこれが初めて。予定していた成瀬もやめにして、体調を整えて劇場へと向かいました(大げさ)。
いやー、すごかった! 樋口泰人さんも日記に書いていらっしゃいましたが*1、この映画、初めから爆音でやることを想定していたかのような音響設計なんですよね。タイトルバックにあのテーマ曲が大音量でかかるところで一気にテンションが上がり、冒頭の大地震の場面では劇場内の空気がビリビリと震えるのが肌に直接感じられ、あとはそのままラストまで一直線。最後のAmerican Spiritとマッチの炎には、わかっていてもグッときてしまいます。
ラスト、カート・ラッセルがまわりを取り囲んだ兵士たちからマシンガンを向けられ、同時に全世界に中継されているテレビキャメラも彼の姿を捉え、しかし彼の上に集中した兵士たちの、そして全世界の人びとの視線は見事に欺かれるわけですが、『目撃』(クリント・イーストウッド)を想起させられるこの場面、もちろん「クリーヴランドで死んだはず」のカート・ラッセル=スネーク・プリスキンとは「映画」であり「ロック」なわけですし、最初の登場シーンでも、彼はキャメラを向けられる存在だったのでした。
 
オールナイトを除いて「爆音サーフの夜」の4作品全てに通ったわけですけれど、この企画はわたしにとってものすごく貴重な体験でした。普段観ないサーフ・ムーヴィーを爆音上映というかたちで観ることができて、どの作品も予想をはるかに上回るおもしろさでしたし、特に先週の『DOGTOWN & Z-BOYS』(ステイシー・ペラルタ)には強く心を動かされました。
「サーフィン映画」と聞いてわたしがすぐ思い浮かべるのは、チラシの文章で青山真治さんも言及していた『ハートブルー』(キャスリン・ビグロー)で、この映画には強い思い入れがあるのですけれど、これを公開時に観て以来、「アメリカ映画におけるサーフィン」という主題が、ずっと気になっていたのでした。それから今日観た『エスケープ・フロム・L.A.』でピーター・フォンダの待ち望むビッグウェーブが現実のものとなり、カート・ラッセルとともに嘘のような身軽さでその大波に乗って疾走する場面の、奇跡的な美しさ。これら、わたしにとって大切なフィルムについてあらためて考えるきっかけを、今回のこの企画を通じて得ることができたように思います。

*1:boid日記の2005/9/20の項。