『リベンジ』(トニー・スコット)

ビデオで。元空軍パイロットという主人公ケヴィン・コスナーの設定には当然『トップガン』を連想させられますし、メキシコ的風土と「復讐」の主題は後の『マイ・ボディガード』に受け継がれます。トニー・スコット作品では年配の男性、ほとんど「老人」と呼んでもいいような年格好の男性が必ず出てきて、そこに年下の男性、青年から40歳手前ぐらいの壮年の男性が配置され、時に反目しつつも広い意味での「友情」でつながれるわけですが、この映画での「年配の男性」=アンソニー・クインの堂々たる風格が、作品の土台をしっかりとしたものにしています。
中盤で不倫がばれるあたりからはどんどんおもしろくなっていって、ケヴィン・コスナーの受ける暴行は熾烈さを極め、マデリーン・ストーの美しい顔にくっきりつけられるナイフの傷痕も実にむごたらしいのですが、でもそれが残酷であればあるほど観ているこちらはある種の甘美さを感じるわけですし、回復したコスナーがマデリーン・ストーを探しに戻る途中で出会う、トラックで馬を運ぶ仕事をしている男も、出てきた時から重い病に冒されていて今にも死にそうで、しばらくしたら本当に死んでしまう、その(非)存在感が何とも言えずいいのです。そういえばこの映画では重要なシーンに馬が必ず出てきて、ケヴィン・コスナーとマデリーン・ストーが初めて出会う場面でストーは馬を引いていましたし、終盤のコスナーとアンソニー・クインの対決場面でも、アンソニー・クインが馬に乗って毎朝必ず通る道で、コスナーたちは待ち伏せするのでした。小高い丘の上に立つ一本の木と、その根方に腰掛けてアンソニー・クインを迎えるケヴィン・コスナーの姿が、そのショット構成のひとつひとつが、すばらしかったです。(11/2記)