『イエスタデイ、ワンスモア』(ジョニー・トー)

シネ・リーブル池袋にて。『ブレイキング・ニュース』と『Election』の公開も控えているジョニー・トーの新作。なのですが、観てるあいだ、ついついほかのことを考えてしまってスクリーンに集中することができませんでした。なにしろゴダールのあとなので…池袋に着いてからも、やめて帰ろうかどうしようかさんざん迷ったのですが…トーさんは全然悪くないんです、タイミングがよくなかっただけなんです(きっと)。
決して悪い映画ではありません。『ザ・ミッション/非情の掟』や『暗戦/デッドエンド』にも見られた遊戯性が強調され、アンディ・ラウとサミー・チェンが鏡像のようにお互いの行動を模倣し、虚々実々の駆け引きを繰り広げます。(元)夫婦の間でえんえんと続けられる模倣・反復の遊戯が、「真実」を隠蔽するためのものであることがわかる時、終わりなどないかに見えた一連の遊戯のかけがえのなさと、そこに込められた愛情にあらためて気づかされるのです。アンディ・ラウの不治の病という「真実」を悪しき内面の仮構と見て、遊戯性が意味性に回収されてしまう不徹底を指摘する人もいるかもしれませんが、わたしとしては、ラストで演じられるふたりにとって最後の模倣・反復の遊戯(アンディ・ラウの替え玉と宝石強奪の反復)、中でも丘の上でのサミー・チェンと替え玉とのすれ違いに、ジョニー・トーの非凡さを感じたのでした。
(11/12記)