『アワーミュージック』(ジャン=リュック・ゴダール)

日比谷シャンテシネ3にて。ものすごくおもしろかった!というのがとりあえずの感想。と言っても、観ているあいだは呆然としてしまって、終わって劇場を出て雨の中を駅まで歩き地下鉄に乗って池袋に向かうあいだにじわじわとおもしろさが実感されてきた、というのが正直なところです。ラストの「映画館」には心底感動しました。見立ての「映画館」は例えば『右側に気をつけろ』あたりでもやっていることですが、何しろ今回は「天国」としての「映画館」なわけですから。
第2部「煉獄編」の冒頭でひさしぶりに耳にするゴダールの声の、記憶していたよりも若干弱々しく感じられたその響きにドキッとして、ああそういえば前作『愛の世紀』の公開からもう3年も経つのかと今さらのように気づかされ、そしてイーストウッドの新作を観るたびに思うこと、すなわちあと何本彼の新作を観ることができるのだろうということを、ゴダールについても(初めて)感じさせられてしまったのでした。いやしかし講義の場面の声には、後半のカフェでの声には、いつも通り張りがあったような? まあそのあたりはもう一度観に行く予定ですのでその時に確認致しましょう。*1
(11/10追加修正しました。)

*1:誤解のないように言い添えておけば、作品自体には「老い」や「衰弱」の印象はまったくありません。円熟していて、しかし同時にみずみずしくもあるような、非常に充実したフィルムです。「若者が死んで老人が生き残る」という物語ですので、「煉獄編」の最後の自宅の場面なども含めて、俳優ゴダールの年老いたさまがいくぶん強調されて描かれているのでしょう。(11/11追記)