『フレンジー』(アルフレッド・ヒッチコック)

DVDで。ものすごくひさしぶりに観たのですが、細部を妙にくっきり覚えていて自分でもビックリ。なんと言っても中盤の階段の後退移動がすばらしくて、ヒッチコック作品における階段の主題が、ここでもまたはっきりと定着されているわけですが、それ以外のちょっとしたシーン、例えば殺人者バリー・フォスターが「母親」と一緒に自室の窓から顔を出して、通りにいるジョン・フィンチを呼び止めるところとか、いやもちろんテムズ川に浮かぶ女性の死体が発見される冒頭の場面なんかもそうですが、「映画的」と言うほかないようなかたちで作られていて、そういった部分に強く惹かれます。
食べ物(食欲)と殺人を結びつける脚本・演出も、こう書くと一見ありきたりな着想に思われてしまいそうですけれど、そこからタイピンのサスペンスにも接続されていくわけですから、非常によく考え抜かれた設計になっているのです。