『家』(ダン・カーティス)

DVDで。なんとも恐ろしい映画でした。邦題通り、そのものズバリの「家もの」ホラーなのですが*1一家4人の身に次々と起こる怪異の脈絡を欠いたありようがとにかく恐ろしいのです。カレン・ブラック(顔が恐ろしい!)が「家」に魅了されて徐々に不在の老女と同一化していくわけですが、正気の時とそうでない時の切り替えが明瞭に描き分けられるわけではなく、それがまた居心地の悪さを感じさせます。オリヴァー・リードもプールで拾った眼鏡をきっかけにして息子を殺しかけたかと思えば、少年時代の葬儀屋の運転手(レイザーラモンHG!)のトラウマ故に全身マヒ状態になったりもして、それからベティ・デイヴィスが死ぬところ、あれは背骨がボキボキ折れたということなのでしょうか、悲痛な表情で身体を奇妙に曲げるばかりで具体的に何が起こっているのか判然とせず、ただとにかくなにかしら恐ろしいことが生起しつつあることばかりが感じられるのです。そうかと思うと逃げ出そうとするオリヴァー・リードの車の前に木が倒れて道をふさぎ、リードの脚にツタがからみつくといったベタな描写もあったりします。そして最後まで狂気に囚われることのなかった息子は二回もプールで溺れかけ、ガス中毒で死にかけたあげく、最後はあんなことに…悲しすぎます。写真まで含めて、実に「正しい」ゴシックホラーです。

*1:原題は“Burnt Offerings”=「いけにえ」。