『LOFT』(黒沢清)

テアトル新宿にて。観るものを落ち着かない気分に陥れる、なんとも奇怪でいびつなフィルムでした。さまざまなジャンル映画の要素が入り乱れたその物語はどうにも据わりが悪く、ひとつひとつの要素が作品内でちゃんと機能しているようでいて微妙に収まりのつかない過剰さを抱えていくあたりは、慎ましく稼働する機械が精密さ・厳格さを超えてわずかに過剰な何かを生産するさまを想起させます。ミイラと原稿が燃やされる焼却炉、沼の岸辺に据え付けられ沼の底から何かを引き上げる装置、あるいは泥を口から吐き出す中谷美紀も、ある種の機械と言えるのかもしれません。
西島秀俊中谷美紀を殺して自分も死のうとするところを数人の警官に取り押さえられるシーンなど、とても魅力的です。そして、ほとんど冗談すれすれのようなセリフを大真面目に口にする豊川悦司の(いい意味で)場違いな熱演。彼の存在は大きいと思います。
ぜひにももう一度観たいのですが(そして前売券をすでに持ってはいるのですが)、今週で上映終了のようですので、残念ながら行けないでしょう。