『ロング・グッドバイ』(ロバート・アルトマン)

DVDで。今さらではありますがロバート・アルトマン追悼であります。
アルトマンはわたしにとって決して全面的に好きな映画作家ではありませんでしたが、すばらしい作品を数多く監督してきたことは確かですし、なかでもこの『ロング・グッドバイ』が一番好きです。撮影ヴィルモス・ジグモンド、脚本リー・ブラケット、音楽ジョン・ウィリアムズと、スタッフにもそうそうたる面々が名を連ねています。
観直してみてあらためて気づいたのは、これもまた口唇器映画の系譜に連なる作品であるということです。エリオット・グールド演ずるフィリップ・マーロウがラストでハーモニカを吹き鳴らす場面を眼にして、『お引越し』(相米慎二)の田畑智子を想起することは決して見当違いではないでしょう。エリオット・グールドが煙草を口にくわえつづけ、スターリング・ヘイドンがアルコールの入ったグラスを手放さないのも、もちろん彼らが口唇器の人びとであるからです。
もうひとつ、これは動物たちの映画でもあります。一匹の猫と数匹の犬たちが画面を実に豊かに息づかせています。