『狩人の夜』(チャールズ・ロートン)

DVDで。こちらも以前のシネフィル・イマジカ版(販売:紀伊國屋書店)と同じものっぽいです(冒頭の企業ロゴだけ差し替わっています)。
幼い兄妹がロバート・ミッチャムの手を逃れて小舟で川に乗り出し、流れに身を任せつつ妹がハエの歌を歌うところで、何度観ても涙が止まらなくなります。少年がリリアン・ギッシュの手に自分の手を重ねて、ためらいがちにお話をせがむところも実に美しいです。
少年もロバート・ミッチャムシェリー・ウィンタースもリリアン・ギッシュも、みな孤独です。いや「孤独」と言うと少し意味合いが違うかもしれません。シェリー・ウィンタースは勤め先のジャム屋の夫婦にあれこれと世話になっていますし、少年には一緒に釣りをする仲の船着き場の老人がいて、なにより守るべき妹がいます。背筋をぴんと伸ばして街を歩くリリアン・ギッシュの後ろには彼女が養育する5人の少年少女が付き従っています。彼らのまわりには常に人がいます。にもかかわらず、彼らは絶対的に「孤独」なのです。少年が絶体絶命のピンチに陥った時、老人は酔いつぶれて正体不明ですし、真実を知ったシェリー・ウィンタースに助けの手をさしのべるものは誰ひとりいません。リリアン・ギッシュの実の息子は母親を顧みず、育てている少女は彼女に嘘をつき、必ずしも彼女の意のままにはなりません。そしてロバート・ミッチャムもまた、絶対的にひとりであり続けます。だからこそ、ミッチャムの口ずさむ"leaning, leaning..."の賛美歌にリリアン・ギッシュが声を重ね合わせて歌い出す場面が、あれほどに美しいのです。ふたりの「孤独」な「単独者」が、敵対しながらも互いのなかに自分自身の姿を見て、共振すること…。ミッチャムを撃ったリリアン・ギッシュが思わず見せる狼狽の表情も、不可避的に同族を傷つけてしまったことに強く衝撃を受けたことの表れなのです。