『右側に気をつけろ』

夜はboid presents 爆音ナイトの第3週目、『右側に気をつけろ』(ジャン=リュック・ゴダール)を観てまいりました。
上映前に岸野雄一による映画音響・音楽ミニ講座があって、『右側に気をつけろ』を観るに際しての補助線を引くかたちになっていました。人類は映画の発明と同時に、映像と音響の切断・分離を初めて体験した(初めて切断・分離が可能になった)という話は、まさにゴダール作品の音響を理解する上での前提のようなもので、今回爆音で観てあらためて感じたのですが、ゴダールとフランソワ・ミュジーの共同作業はスリリングのひと言に尽きます。音響は映像の単なるおまけなどではなく、映像と等価な(対等な)世界を構築しうるのだという認識に立ったその音響設計は、ゼロから作り出されたかのように綿密に積み重ねられていて、なおかつ実に大胆でもあるのです。リタ・ミツコのレコーディングシーンにその場で鳴っていない音をどんどん足していったかと思うと、ふっといくつかのトラックを抜いてみせ、別のシーンの音響を接続してみせたりするわけです。この映画を観るのはこれで5回目ぐらいですが、今回もまた頭を働かせる暇もなく、映像と音響の圧倒的な情報量を前にして、ただただうっとりと観続け聞き続けるのみでありました(字幕とか全然追えてません)。