矢沢あい『NANA』1〜13巻

ここ数週間、人から借りたこの漫画を会社で勤務時間中にだらだら読んでいたのですが、本日ようやく読了致しました(遅すぎ)。「まぁた流行りものなんか読んじゃってコノヤロウ!」というむきもありましょうが、これ、予想外におもしろいんです。
最初の方では、エピソードの挿入のしかたとか人物配置とかのヘタクソな部分ばかりが眼について(なにしろくらもちふさこファンですから)、楽しく読み進めつつも「どうなんだろうこれ?」という気持ちでいたのですが、最新刊まで読み進めた感想としては、傑作とまではいかないにせよ、とても魅力的な物語だとは言えるのではないか、といったところです。
魅力のひとつは「バンドもの」というジャンルによるもので、先日の映画『DOGTOWN & Z-BOYS』(ステイシー・ペラルタ)なんかもそうなんですけれど、何人かの人びとが集まってひとつの目的を共有し、なにかを作り上げていくという話にわたしはひどく弱いのですが、それというのも、大げさな言い方になりますけど、それが日常的な「奇跡」だからなのです。そしてこの物語におけるもうひとつの「奇跡」が、ほかならぬ707号室での蜜月なわけですが、その至福の時間が永遠に失われて二度と取り戻せないものであることが、ふたりのナナ=奈々が共同生活解消後にあの時のようにじゃれあい、親しく語り合うことが(今のところは)できなくなってしまうという展開で、示されるかたちになっています。そのことが非常に象徴的に描かれているのが12巻の終わりから13巻の半ば過ぎまでえんえんと続くレイラとシンの誕生日パーティの場面で、ナナの部屋に泊まるつもりでいた奈々はタクミに連れ出されてしまい、戻ってみるともう奈々が帰ってこないと思いこんでいたナナはすっかり酔っぱらっていて、翌朝には奈々が戻ってきたことすら記憶していないというありさまで、要するにふたりはすれ違い続けなかなか会うことすらできないうえに、会えたら会えたで、707号室の時のようにふたりだけの親密な時間を過ごす機会を奪われ続けるのです。
さらに、バンドと707号室というふたつの「奇跡」がもう取り返しのつかないかたちで失われてしまったことが、あの各エピソードの始めと終わりに配される未来の視点からの語りによって、決定的に性格づけられるわけなのですが、ここでの回顧の主体が奈々とナナふたりによる互いへの呼びかけによってなされている点が、なんとなく疑問でもあり、またそれ故に今後の展開への期待にもつながる部分です。
最初にも書いたとおり、不満がないわけではなくて、それどころかアラを探せばいくらでも見つかるわけですけれど、どいつもこいつもセックスばっかりしてて、順列組合せみたいに男と女がひっつきまくるというむちゃくちゃな展開も含めて、まあ許せる範囲なんじゃないでしょうか。
というわけで、気がつけば早くも続きが読みたくてしかたがない自分がいるのでした。