『ゴーストハンターズ』(ジョン・カーペンター)

DVDで。この荒唐無稽で支離滅裂なフィルムがわたしは大好きなのですが、ショウ・ブラザーズのクンフー映画にカート・ラッセル演ずる絵に描いたような「アメリカ人」(トラック野郎!)が飛び込んでいって世界を救うという物語に、3組のカップルの恋愛を織り込み、中国ウン千年の背景を覗かせるというてんこ盛り状態で、後半の舞台となるロー・パンのアジトはウェス・クレイヴン作品さながらにむちゃくちゃな空間設計だし、途中に出てくるクリーチャーについては最後までなんの説明もないしで、たぶんスタジオ側に何度もいじられて*1、そのせいでなおさら混乱を極めているような気もしますが、そういった混乱は決して悪くはありません。空港での誘拐を視線で描くところも、決してうまくはないけれどよく考えられているし、カート・ラッセルの走らせるトラックが急カーブして路地に入り込むと突然あたりが異世界に変貌するという部分にも、映画的な呼吸が強く感じられます。
次作『パラダイム』とは濃密なつながりがあって、ヴィクター・ウォンやデニス・ダンといった役者の共通性以外にも、向こう側の世界(ラカンの用語をあえて誤用するなら「現実界」)から強力な力を持つ邪悪な何ものかが甦るという話で、その媒介に女性が必要とされるところまで同じなわけですが、まあこれはある種の類型なのでしょう。

*1:編集者に3人の名前がクレジットされています。