『ステルス』(ロブ・コーエン)

新宿プラザにて。『ワイルド・スピード』『トリプルX』の2作が結構好きで、この新作も前々から楽しみにしていました。たとえばラストの北朝鮮国境地帯のシーンなど、お世辞にもすばらしい演出とは言いがたいのですが、それでもこの映画にはいくつかの美点があります。まずは人工知能がほとんど恣意的と言ってもいいほどに学習する事柄を選択することのご都合主義。このあまりに人間的な機械が最終的に自己犠牲の精神を学び、仲間を救うために自爆の道を選ぶという、いかにもありがちな物語を演じるからと言って、それを退屈だと言い募ることには、積極的な意味を感じ取ることはできません。ステルス部隊の指揮官(サム・シェパード)がプロジェクトを成功させようと計画を急ぎ、そのせいで起こった「事故」を糊塗するために独断で暴走し、次第に孤立していくさまも、紋切り型ではありますが物語として悪くないです。逆に、ステルス機による網膜スキャンや指紋照合まで駆使したアイデンティファイ能力と、北朝鮮の捜索隊の指揮官のあの信じがたい距離を無化する狙撃=視線が不意に接続されたり、ジェシカ・ビールの落下シーンをえんえんと描いてみせるといった部分に、この作家の特質があると思うのです。