『ヌーヴェルヴァーグ』(ジャン=リュック・ゴダール)

吉祥寺バウスシアターにて。boid presents Sonic Ooze Vol.8「爆音ゴダール・ナイト#1」の4本目、ラストの作品。フィルムで観るのは公開時以来、ひさしぶりです。精神的におかしかったせいもあるでしょうが、前半部分から涙があふれてきて、そのまま最後までウルウルしっぱなしでした。たまにはこういうこともあります。それにしても、このとりあえず選択されただけのようにも見える愛の物語を、ゴダールは真剣に、本気で信じていて、わたしとしてはそこに心を強く揺さぶられるのです。普通にいい話なんですよねこれ。さらに、少しずつ見え隠れしていた湖が中盤で一気に前景化されるなど、計算され尽くした脚本と演出が実にすばらしいのです。こんなことはゴダールなのですから当たり前のことではあるのでしょうが、その当たり前の良さにあらためて感動させられた、ということです。
窓辺にたたずむ女性とか、アラン・ドロンの声とか、速度を変えていくつか接続される横移動のショットだとか、充実した細部のひとつひとつが、かけがえのない切実さで心に迫ってきます。欲を言えば、今日の気分としてはもうちょっと「爆音」であって欲しかったです。セリフとか割れちゃってても全然問題ないと思うんですけど…でもあれが限界なのかなぁ。