舞城王太郎『世界は密室でできている。』(講談社ノベルス)

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

世界は密室でできている。 (講談社ノベルス)

奈津川家サーガの番外編といったところでしょうか。『煙か土か食い物』の中盤で死んでしまったルンババ12とその友だちである主人公=語り手の物語です。終わり近くで殺人鬼が殺され、その犯人は奈津川家の誰かであることが示唆されますが、事件はそのままうやむやになってしまいます。犯人は二郎なのか、あるいは四兄弟の父親なのか、ひょっとするとこの続きが「ルンババ12」シリーズとして書かれる予定なのかもしれません。
謎の提示とその解明、このふたつのあいだをいかにテンションを保ちつつ引き延ばすかが推理小説というものの重要な構成要因のひとつであるとして、この作品のように謎が提示されて即座にその解明が行われるというのは、小説行為そのものの放棄であるかに見えるかもしれません。でもわたしはこの簡潔さと素っ気なさが大好きです。短くて済むのであればそれにこしたことはないのです。
ラストのルンババ12のセリフ、「何たるアンチクライマックス。まあいいわ。おっしゃー!」にはグッと来ました。