『輪廻』(清水崇)

新宿コマ東宝にて。映画をめぐる映画です。事件の再現ドラマの撮影と、事件そのものを殺人者が撮影した8mmフィルムの上映を契機として、転生者たちによる惨劇の再演がなされ、その再演を通じて殺人者に対する死者たちの復讐が遂行されるという話で、それらをカットバックで見せる終盤は決して悪くないですし、映画の持つ(上映による)反復性・再現性を「輪廻」と結びつける着想はとてもおもしろいのですが、どうも決定的ななにかが起きてしまいもう後戻りはできないのだという不可逆性の感触が欠落していて、おまけに惨劇の再演が現実に起こったこととしては明示されず、優香の意識レベルの出来事としてのみ扱われるとなると、そこだけで小さくまとまってしまう感じは否めません。要するにこれではちっとも恐くないのです*1。日本版の劇場版『呪怨』には確かに現実世界が取り返しのつかない変化をこうむることの恐怖があったはずです。ホテルの造形も撮影所も優香のマンションも、映画的空間としてこれまた決して悪くはないのですが(なかでもホテルはかなりいいんですけれど)、『呪怨』の家のひずんだ空間設計には遠く及びません。
(1/23加筆修正しました。)

*1:わたし自身の前世も実は殺人者であり、前世で殺めた人びとによっていつ復讐されるかもわからない、という恐怖はあるかもしれませんが。