『柔道龍虎房』(ジョニー・トー)

DVDで。劇場公開時に観逃していて、今日が初めてだったのですが…なんですかこのはちゃめちゃぶりは! 映画館で観てたらもっと興奮しただろうにと悔しい思いをしております。
チェリー・インが博打で負けたお金をつかんで賭場から逃げる場面などほんとにおもしろくて、夜の通りにまき散らされたお札を、追いかけてきた賭場の用心棒たちが懸命に拾い集めているところに、チェリー・インが戻ってきて一緒になって拾ってみたり、ルイス・クーが殴られている間にいったん逃げていたチェリー・インがまた引き返してきて、通りに転がるルイス・クーの靴を拾って戻ったりと、緩慢さと緊張感の入り交じった不思議な時空間をかたちづくっています。ルイス・クーがチェリー・インと一緒にバーのトイレに隠れるシーンも好きです。ゲームの対戦相手に小声で悪態をつき続けるやくざの人など、人物造形もアイディアに満ちあふれています。
姿三四郎』(黒澤明)にインスパイアされた作品ということなのですが、わたしは観ていて黒澤よりもむしろ相米慎二のフィルムを想起しました。もちろん相米ほどの繊細さはここにはないかもしれませんが、ご都合主義を恐れぬ大胆な演出や長回しのショットの中で時間と空間を変形させる方法など、共通する部分があるようにも思うのです。