あけましておめでとうございます

本年もよろしくお願いいたします。
以下例年通り、2011年が自分にとってどんな一年だったかを、メモ書き程度に書き留めておこうと思います。
 
 
● 映画…『ファンタスティック Mr.FOX』(ウェス・アンダーソン
 
昨年はウェス・アンダーソンジャン=リュック・ゴダールトニー・スコットジョン・カーペンターらの新作を観ることができました。
しかしわたしにとって最大の事件は『ヒア アフター』(クリント・イーストウッド)を観逃したことでした。1990年の『ホワイトハンター ブラックハート』以来、すべて公開時に劇場で観ていたクリント・イーストウッド作品を観逃したことで、ぽっかりと空白ができたような感覚があって、そしてそれは今でも続いています。自分にとってクリント・イーストウッドがいかに特別な存在であり、映画を観ることとイーストウッドの映画を観ることがどれほど密接につながっているかを、あらためて思い知らされました。このことは3.11の記憶とともに、書き残しておきたいと思います。
ヒア アフター』のブルーレイディスクはすでに購入済みです。なるべく早めに観ようと思います。
 
 
● 音楽…toddle『the shimmer』

the shimmer

the shimmer

 
昨年わたしのiTunes/iPodでもっとも再生回数が多かったのはtoddleの3枚目のアルバムでした。toddleは実に貴重なバンドだと思います。うまく言えませんが、あの感触、あの距離感、声の響きと重なり、ギターの弦のふるえは、そのひとつひとつが得難い輝きを放ちつつ、聴くものの胸に積もり、層をなしていくようです。
ちなみに次点はねごとのデビューアルバム『ex Negoto』でした。
 
 
● アニメ…『輪るピングドラム
輪るピングドラム 1(期間限定版) [Blu-ray]

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今年はとにかくテレビアニメばかり見ていました。秋アニメは週15本以上見ていたと思います。なぜこんなにたくさん見ているのか、なぜ急にアニメを見始めたのかは自分でもよくわかりませんが、ともあれ今年の主要なテレビアニメはほぼ見ているはずです(『IS <インフィニット・ストラトス>』は見逃しましたけれど)。
なかでも幾原邦彦監督ひさびさの新作『輪るピングドラム』はすばらしかった。全24話、すべてがとても刺激的でした。巧みに構成・構築された脚本、互いに影響しつつ時に連携し時に補強し合う複数の運動(物語と主題系の連動やペンギンたちに代表される副次的な動き、現実と虚構の往還など、複数のレベル/層における運動が互いに緊密に結びつく)など、美点を挙げればきりがありませんが、それらすべてが必然性と驚きとを併せもつようにして正しく閉じられ、そして最後にかすかな響きを残して締めくくられるあの美しい最終回には、強く心を揺さぶられました。
それまでの流れを断ち切るように挿入された9話も実にすばらしかった。最終回をのぞいては9話がいちばん好きな回です。
 
 
● ゲーム…『Ever17 -the out of infinity- Premium Edition』(KID/サイバーフロント
BEST HIT セレクション EVER17  ~the out of infinity~ Premium Edition - PSP

BEST HIT セレクション EVER17 ~the out of infinity~ Premium Edition - PSP

 
数年来やりたかった『Ever17』をついにプレイすることができ、かつそれが非常に刺激的な体験だったことは、以前のエントリに記したとおりです(http://d.hatena.ne.jp/sounddust/20110626/p1)。
ノベルゲーム/ビジュアルノベル美少女ゲームへの関心は依然継続しています。人より読み進めるのに時間がかかるため、なかなか数をこなせずにいますが、今年も可能な限り多くのゲームをプレイしたいと思っています。過去の名作群もさることながら、新作も進められるよう努力したいところです。
 
 
● 3月11日
わたしもまた、あの日都心の会社から歩いて帰った多くの勤め人のひとりでした。会社にいるあいだからテレビやネットを通じてただごとでない状況であることはわかっていたのですが、どこか現実離れした心持ちで会社を出て、途中新宿駅の構内に立ち寄ったものの電車が動く様子はなく、大勢の人々とともに青梅街道をひたすら西へと向かって歩きました。道沿いのコンビニをのぞくと棚の食品がきれいになくなっていたこと、歩道が人であふれかえってなかなか前へ行けないため、車道に出て車の横をいくぶん駆け足になりながら進んだこと、寒さに身体がこわばり喉も渇いて、途中どこかで休憩すべきか、でも立ち止まったら歩けなくなってしまうんじゃないかと逡巡したことなど、今でもまざまざと思い出すことができます。結局4時間ほど歩いたところで普段の運動不足がたたって脚がいうことを聞かなくなり、会社と自宅の途中にある実家までなんとかたどり着いて一泊させてもらったのですが、ふとんにくるまって身体を温めながらテレビで伝えられる被災地の惨状を見るにつけ、むしろ頭が冷えていくような感覚を持ったことも、よく記憶しています。
もちろん東京に住むわたしなど、被災地の方々に比べればさしたる不自由もなく、当日の体験にしたところでことさら口にするほどの特殊なものではないわけですが、それでもこわばった視線を足元に落としつつ、家に帰り着くことだけを念じて、痛む足をただひたすら前に進め続けたあの夜のことは、この先も忘れることはできないでしょう。あのあと数日のあいだ、会社も世間もことさら意識して日常に復するよう努めたし、自分自身を取り戻すためにもそれは必要なことだったとも思います。こうしてゲームをしたり映画やアニメを見て過ごしていると、以前となにも変わらないかのようでもあるのですが、それでもやはり、そこには断絶があって、以前には戻れないということもまた、確かなこととして実感されるのです。