宮台真司『終わりなき日常を生きろ』(ちくま文庫)

なぜ今頃こんな本を読んでいるのかよく分かりませんが、それでも思っていたよりは面白かったです。共同体の崩壊に伴い、これからはコミュニケーションスキルの有無という内的制約の差が、人生に対する充足感の差をより一層決定的なものとするだろう(というかすでにそうなっている)という展望は、村上龍もよく言っている貧富の差の拡大という問題につながる話だと思うのですが、昔であればコミュニケーションスキルや資産の格差の原因を、外部(資本家・国家etc)に求めることができたわけですが、今日では個人の内部、その人の資質にしか原因を見いだすことができなくなってしまい、そのことが人びとのあいだに絶望を呼び起こすことになるだろう、という分析は、まさに我が身に起こっていることとして非常によく理解できるのです。「文庫版あとがき」に書かれている「承認の供給不足」の話も身にしみて実感できます。うーむ。