『ヘンリー・プールはここにいる 壁の神様』(マーク・ペリントン)

DVDで。初見。パッケージに「コメディ・ドラマ」と書いてあるのでいわゆるコメディなのだとばかり思い込んでいたのですが、笑える要素はあまりありません。
壁に浮き上がる染みを見つめ、そこに意味を見いだすという物語には、映画を観ることをめぐる「信仰」的側面のナイーヴさを意識させられます。壁の染みの持つ意味について喧伝してまわる人物はパラノイアックに描かれますし、ラストで主人公は壁=スクリーンを壊しもするのですが、とはいえ映画そのものはそのことに必ずしも否定的ではなく、最終的に主人公は不治の病から奇跡的な回復を遂げ、物語はハッピーエンドに至るわけで、言ってみればそのどっちつかずにもとれる姿勢、判断保留にこそ、ある種の倫理を見ることができるのかもしれません。