『和製喧嘩友達』『突貫小僧』『鏡獅子』(小津安二郎)

小津安二郎DVDボックス第4集の特典ディスクに入っている作品です。『和製喧嘩友達』と『突貫小僧』はいずれも再編集された15分ほどの断片なのですが、元のフィルムのすばらしさをうかがわせるような、魅力的なショット・シーンを多く含んでいます。例えば『和製喧嘩友達』のラスト、新婚夫婦を乗せた汽車と、並んで走る主人公ふたりのトラック。映画の原型的な記憶(『イントレランス』)に言及してみせつつも、ここではカットバックによってサスペンスが演出されるわけではなく、汽車のカップルがトラックに気づいて窓から身を乗り出して手を振り、トラックのふたりも並んで彼らに手を振り返すという、小津的な「並ぶこと」の主題が描かれるのです。『突貫小僧』はコメディとして単純におもしろいのですが、ここでも視線の演出が実にまっとうになされ、映画の骨格を見事に作り出しています。『鏡獅子』は海外の人びとに歌舞伎を紹介する目的で作られたドキュメンタリーなのですが、楽屋で六代目尾上菊五郎が台本を読んでいて、つと立ち上がって鏡に向かい支度を始めるという場面があって、本編ともあまり関係のない、何のことないシーンなのですが、アクションつなぎを使ってみたり台本を持つ手で拍子をとっているさまを捉えたショットがあったりと、ここだけとっても十分「映画」になっているわけです。