『ロード・オブ・ウォー』(アンドリュー・ニコル)

新宿オスカーにて。アンドリュー・ニコルの監督作を観るのはこれが初めて。とてもおもしろい映画でした。ニコラス・ケイジ演ずる武器商人の「空っぽ」ぶりがすばらしいです。中盤以降苦悩しているかに見えて、結局妻子に逃げられ弟を失っても商売を続けるわけですから、その「苦悩」が彼の行動に決定的な影響を与えることはありません。そして彼が「空っぽ」であればあるほど、物語は円滑さを増して作動していくのです。インターポールの捜査官(イーサン・ホーク)による必死の追跡にも、船名は瞬時に書き換えられ、飛行船に乗せられた銃はものの10分で姿を消して(ついでに飛行船自体も消滅して)致命的な証拠をつかませず、ラストでとうとう証拠*1を押さえられたかに見えても、最終的にはより大きな物語の機能によって釈放される…というか、法に忠実なイーサン・ホーク自身の性格自体も、ニコラス・ケイジの物語(武器輸送の運動、A地点からB地点への「商品」の移動)の十全なる機能に奉仕させられているのでした。
ということで、今年はこれが映画館で観る最後の1本となりそうです。

*1:あのコンテナ倉庫こそがニコラス・ケイジの「内面」を充填するものであり、つまり彼は本当は「空っぽ」ではなかったというようにも一瞬見えるのですが、結局はそれもまた物語の一部に過ぎないのでした。