『ニック・オブ・タイム』(ジョン・バダム)

DVDで。ジョン・バダムの映画は『アサシン』を公開時に観ただけで(『サタデー・ナイト・フィーバー』も恥ずかしながら未見なのです)、これも今日が初めてだったのですが、いやぁものすごくおもしろかった! まずは脚本のすばらしさ。いわゆるリアルタイムムーヴィーで、上映時間とシンクロするかたちで物語内の時間が進むなかで、ジョニー・デップは果たして期限の時間内に知事暗殺を阻止して娘を助け出せるのか(あるいは結局暗殺に荷担してしまうのか)というサスペンスが展開されるのですが、よくよく考えてみれば、殺しの依頼者側が90分以内に知事を殺さなければならない必然性は全く示されないわけです。さらにはクリストファー・ウォーケンの異様さ。ジョニー・デップの娘を人質に取って彼に知事暗殺を強要するクリストファー・ウォーケン、遠くで監視していればいいものを、ジョニー・デップにずっと貼り付いているんですよね。そこまであからさまに一緒にいるんだったら、もういっそのことお前が知事撃てよ!って言いたくなるぐらいです。まわりじゅう仲間だらけなんだから、たとえ自分で手を下したとしてもいくらでも言い逃れようはありそうなものですが、それはともかく、デップが誰かに助けを求めようとすると、間髪入れずにウォーケンが現れるというその密着ぶり(距離の欠落)が、デップと知事との距離の伸縮と対照されて、なんとも効果的なのです。ウォーケンやその仲間たちの無数の視線によって監視される中で、デップが助けを求めた靴磨きのおじさんを起点に、ホテル従業員たちのネットワークが円滑に機能するさまが、これまた実に気持ちいいわけです。車のガラス窓に開いた穴からジョニー・デップと娘が銃で狙われるラストまで含めて、ご都合主義と反リアリズムの爽快さに満ちあふれた、なかなかの快作でありました。
(1/24加筆修正しました。)