ダン・ブラウン『ダ・ヴィンチ・コード』上中下巻(角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

ダ・ヴィンチ・コード(上) (角川文庫)

(微妙にネタバレしてますよ。)
 
小説だと思って読むから「長すぎ」*1とか「ヘタクソ」とか文句も言いたくなるわけですが、小説ではないと考えればあとはスルスルと読み進めて後味すっきりなのでした。「キリスト教世界」にとってここに書かれているようなことが果たして衝撃的であるのかどうかはよくわかりませんが、ソフィーにとって衝撃的だったはずの「性の儀式」も最後には(西欧文明の影響下にある)現代人の倫理に抵触しない範囲に回収され、少なくとも内容レベルでの不快感は感じさせない結末となっています。謎を追い求めつつぐるぐるといろんなところを経巡って、最終的に出発点に戻ってくるという構造は、一昨日朦朧とした意識のなかで観た『ブロークン・フラワーズ』(ジム・ジャームッシュ)と同じだったりして、それにしてもジャームッシュはだらだら撮っているように見えてその実物語の経済学を非常によく心得ているのに比べ、ダン・ブラウンという人はちっとも経済的な語りを理解していないようです。あのいい加減な視点人物の転換をやめるだけでもかなりマシになるはずなのですが。
…結局小説だという考えから離れられませんでした。

*1:ネタ的には短編向け、引っぱっても中編程度がいいところのはず。誰か気の利いた人に書き直してもらうといいと思います。