『草叢』(堀禎一)

ポレポレ東中野にて。主演の速水今日子がすばらしいです。廃品交換車の拡声器の音を耳にして、預かっていた幼児を放り出し、いそいそと青年(吉岡睦雄)のもとへ急ぐあたり、その幾日かあとに同じ拡声器の音を戻ってきた夫(伊藤猛)と一緒に食卓で耳にする場面、脚本も演出も非常に充実しています。音は速水から吉岡に渡される自転車の鍵につけられた鈴のかたちでも、ふたりのあいだを仲立ちします。最初に鈴が渡され、後に拡声器の音が返されるのです。三者が一堂に会し、速水が男たちに感情をぶつける終盤の場面もとてもよかったです。