『オペレッタ狸御殿』

もうすぐ打ち切りになりそうな雰囲気だったので、今日は新宿ピカデリー2で『オペレッタ狸御殿』(鈴木清順)を観てきました。大学1年の時に池袋のシネマ・セレサ(現在のシネマ・ロサの片一方がこういう名前でした)で『けんかえれじい』と『殺しの烙印』の2本立てを観て映画の見方が変わるほどの衝撃を受けて以来、鈴木清順はわたしにとって特別な存在で、その清順の新作を観逃すというわけにはいきません。
でどうだったかというと、なんというか、純粋にいい映画でした。前作『ピストルオペラ』の方がもうちょっと複雑で、いろいろ細かいことをやっていて、そこがまた面白かったと思うんですけど、それに比べると新作では要素が非常に単純化されています。その単純化が決して画面を貧困にすることがないのが鈴木清順のすごいところで、画面上の諸要素の運動が、シンプルな物語を豊かに活気づけるかたちになっています。奥行きを欠いた画面を中心に展開されるドラマの転換点に、垂直の運動(ハラハラと落ちる桜の花びら、滝、オダギリジョーが極楽蛙を取りに行く時のハシゴ)が配置されるという具合です。織り交ぜられる実景もとてもよくて、川のショット(橋が手前に配置されている)だとか丘の上に桜の木があるところだとか、実にいいのです。
とても野心的な作品であり、「清順美学」などという言葉に回収されたりしない、驚きと新しさに満ちた映画です。俳優について、あるいは踊りの振り付けについてなど、気になるところは多々あるので、疲れていない時にもう一回ちゃんと観たいです。