『スペシャリスト』(ルイス・ロッサ)

DVDで。初見。劇場公開時に観た『アナコンダ』は映画的記憶と練り上げられたアクション演出に充ち満ちた非常に面白い映画で、監督ルイス・ロッサの才能は疑いようのないものだと思ったのですが*1、その後ハリウッドでは仕事が続かなかったようで、新作に接することができないのが残念です。『アナコンダ』の前の監督作品である『スペシャリスト』もまた、一見ありふれた題材でありながらも随所に鋭い演出のアイディアを見せてくれる、悪くない作品になっています。シルベスター・スタローン演ずる主人公は爆薬のスペシャリストですが、そもそも爆薬とは、爆薬とターゲットとの「接触」と、爆薬と自分との「距離」の両方を前提としています。ですからこの映画は自ずと「距離」と「接触」をめぐる物語になるわけです(つまりは「映画」をめぐる物語なのです)。人前に姿をさらすことなくターゲットだけを爆破するスタローンは「距離」を張り巡らせる存在であり、その「距離」の攪乱者、「接触」への誘惑者としてシャロン・ストーンが特徴づけられるのですが、注目すべきはスタローンとストーンが電話を通じて互いの声に惹かれあうという部分でしょう。視覚的な「距離」に、聴覚・音響的な「接触」の誘惑が対置されるのです(このフィルムでは「接触」への契機として常に音声が関係してきます)。しかし最初にも書いたように、爆薬とはターゲットとの「接触」(あるいは接近)を前提としなければ機能しないものであり、それ故に「スイッチを押す人」でしかないジェームズ・ウッズは「距離」の部分を担うことはできても「接触」を積極的に操ることはできません。
崩落するホテルの部屋(窓の向こうに海が迫ってくるスクリーンプロセスのショットが実にいいです)や、シャロン・ストーンがサングラスを吹っ飛ばしてジェームズ・ウッズを殴る場面など、見どころも満載。ホントにいい映画でした。

*1:しつこいようだけどジョージ・ルーカスリドリー・スコットを横に並べてみれば、演出の才能の差は歴然としていると思います。