『エクソシスト ビギニング』(レニー・ハーリン)

DVDで。昨年秋の公開時に観逃していたレニー・ハーリンの最新作*1ですが、正直に言って何をどう見たらいいのかよくわからないまま終わってしまいました。レニー・ハーリンの悪いところばかりが目立っていたように感じます(さすがにマイケル・ベイほどへたくそではなかったですけど)。もちろん一定水準以上の仕事はしているわけだけど、『ディープ・ブルー』『ロング・キス・グッドナイト』『クリフハンガー』『ダイ・ハード2』といった秀作群に比べると、アクションの明解さに欠ける分、全体としてぼやけた印象になっているのは否めません。例えば彼が得意としていた上下軸を用いたアクション演出などは、ここではほとんど見られません。この傾向は前作『ドリヴン』から始まっていて、でも『ドリヴン』には別の何かがあったと思うんですよね…。
ステラン・スカルスゲールド演ずるメリン神父*2が遺跡から偶像を持ち帰るよう依頼されるところから物語は始まります。古美術収集家ということ以外その身元が明かされることもなく、姿をあらわすこともないこの依頼者*3、普通に考えれば「神」もしくは「悪魔」ということになるのでしょう。スカルスゲールドを不断に苛む第二次大戦中の虐殺行為への協力の記憶ゆえに、彼は収容所で虐待を受けた過去を持つ女性医師に取り憑いた悪魔から誘惑されることになるのですが、悪魔に取り憑かれていたのが女性医師であったことが判明する場面も、ラストの悪魔払いを通してスカルスゲールドが信仰を回復し神父であることを受け入れる場面も、決定的な瞬間を生み出すに至っていません。古代の悪魔崇拝の遺跡の上に建てられた教会、そこを発掘・調査するスカルスゲールドが地下へと降りていくというのもまた、上下軸によるアクションを導入するというよりは、「無意識の古層に眠る邪悪なものの発見」とでもいうような物語の説明に留まっています。ううむ、どうもないものねだりな言い方になってしまっていますねぇ。。
(8/2書き直しました。)

*1:エンドロールを見て初めて知ったのですが、キャメラヴィットリオ・ストラーロでした。

*2:エクソシスト』でマックス・フォン・シドーがやっていた役です。

*3:映画の冒頭とラストでスカルスゲールドに直接会うのは依頼者の代理人です。