『ボビー・フィッシャーを探して』(スティーヴン・ザイリアン)

DVDで。初見。とてもいい映画でした。練り上げられた脚本の簡潔にして的確な場面構成、短いショットと長めのショットの連鎖がもたらす緊張感と躍動感、主人公の少年を演ずるマックス・ポメランクによるささやき声のナレーションの美しさ。ザイリアンはチェスのゲーム展開を事細かに説明することを端から放棄し、駒を進め相手の駒を奪い時計をたたくように押すという一連の動作を「アクション」として描くことに徹していて、それがこの映画に生き生きとした感触をもたらしているのだと思います。公園で人びとが熱中するスピードチェスに主人公が魅了されるファーストシーンからして、雨の降るタイミングなど本当にすばらしいですし、父親(ジョー・マンテーニャ)に対して母親(ジョーン・アレン)が「息子を傷つけることはわたしが許さない」というようなことを口にする場面の、ジョーン・アレンを正面から捉えたウエストショットなど、実に美しいです。